人生最高の本、映画

 松居大悟が人生最高の一冊『劇場』(又吉直樹著)を語る

2017.12.15 インタビュー生き様東京グラフィティ12月号(♯147)

小峰  克彦

小峰 克彦(Editor)

話題の人に、『今まで読んできた中で一番大切な本』を聞く東京グラフィティの連載企画「人生最高の本」。
今回東京グラフィティ12月号『TOKYOSEX』でお話を伺ったのは映画監督・舞台作家の松居大悟さんです。

誌面から、その一部をご紹介!

身近な場所、身近な環境。まるで自分を描いているような小説

:『劇場』又吉直樹 著/新潮社 :松居大悟/映画監督・劇作家


 

僕、本を読むペースが比較的ゆっくりなんです。
月に一冊ぐらいでないと、本のストーリーや登場人物の動きについていけない。あまり没頭して読めなくて、職業柄もあってか、物語の構成に気をとられてしまう。
しかし、この本は違いました。まるで自分のことのように読み進められて、終盤は作品が終わることが寂しくて、逆に1ページずつじっくり読んだりもしました。
小説のあらすじは、劇団をしている男が女の子に恋をして、どうしようもない部分とかを彼女に全部肯定してもらいながら、基本は下北沢をウロウロしてる。
その生活のなかで関わっているいろんな人に傷つけられたり傷つけたりしながら、その子と付き合ってから別れるまでの恋愛が描かれています。
自分も演劇をしている点で主人公と同じだし、劇場の多い下北沢も身近な場所だから見ている景色も近い。
そういう親近感が作品へ没頭した理由の一つなのかもしれません。
環境や境遇が似ているし、主人公の考え方や恋愛の仕方も似ていて、小説丸ごとまるで自分ごとのようでした。

 

セックスのシーンを描かず、二人の関係性が描かれている新鮮さ

この小説のすごいところは、男女の恋愛関係を描いているのに、セックスのシーンが一つもないこと
普通の恋愛小説だったら、当たり前に描かれるところだと思うんですよね。
その方が恋愛関係がダイレクトに伝わるし。僕も自分の作品で、男女の恋愛を表現するのに、セックスシーンを描かないことが多くて。それで批判されることもよくあります。だって、恋愛関係があればセックスはきっと起こるから。だから、『劇場』の主人公とその女の子の間にも、出来事としてはあるはずなんです。そういう誰もが描くであろう男女のドラマチックな部分をあえて描かないで、むしろ些細な会話や、なんてことない瞬間を言葉にしている。それが、読者に物語を俯瞰させることなく、自分ごとのように読み進められた理由なんじゃないかと思います。
僕は小説や映画がドラマチックだったり、劇的な設定であればあるほど、自分自身とは遠のいていく気がします。
セックスも、男女の関係を描くにはあまりにもそのものすぎる。
僕自身が監督や脚本を書くときも、そうではないところで恋愛や人間関係を描くことができたらと思っています。
登場人物も、注目を集めるキャラクターや設定より、むしろその隣にいる人が気になるし。
なんでもない瞬間を拾い上げて、言葉や表現にしたい。
そういう些細な出来事が言葉として描かれることで、今まで言葉になっていなかった感覚に気づくことってあると思うんです。


演劇人としての自分自身の創作人生と重ねながらお答えていただいたインタビューでした。
東京グラフィティ12月号『TOKYOSEX』では松居大悟さんの完全版インタビューが掲載されています!

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