タバコがかっこいい映画

横尾初喜「タバコは大人になってからの支え」

2019.02.01 レビューインタビュー

こみね

こみね(Editor)

PROFILE

横尾初喜(39)映画監督
映画・ドラマからCMまで幅広く演出。放送中の『スキャンダル専門弁護士 QUEEN』(フジテレビ)演出を務め、 新作映画『こはく』が今年公開予定。

盛大なおふざけと大人のかっこよさの同居

『鮫肌男と桃尻女』
2000年 日本/出演:浅野忠信ほか/東北新社
​組の大金を奪って逃げている男とそれに巻き込まれた退屈な生活から抜け出したい女の逃避行。

 学生時代から浅野忠信さんが大好きでした。細い目なのにスタイリッシュで個性的。自分も目が細いので、見た目のロールモデルになる人をやっと見つけた感覚でした。

 『鮫肌男と桃尻女』は浅野さんがタバコを吸っているジャケットがかっこよくて手に取ったのですが、実際に観てみると最先端の映像表現に衝撃を受けました。まず、キャラクターを一人ひとり紹介していくオープニング映像がかっこいい! ストーリー自体は和製『レオン』とも言えるようなハードボイルドな展開なのに、シュールな小ネタがたくさん散りばめられているんですよね。

 ビジュアルはかっこいいのに徹底的にふざけるというこの姿勢は、映像ディレクターになった今の自分にとっても指針となっています。ギャグ要素とシリアス劇がごちゃまぜと聞くと 一見成立しなさそうですが、鶴見辰吾さんが女ボスのタバコに火をつけるシーンなど、個性的 なキャラクターがバカスカ喫煙 する姿が最高にキマっていて、 唯一無二の世界観を作っているんです。何度も観返している作品ですね。

 大学生だった当時の自分にとって、タバコとブラックコーヒーはまさに大人の象徴でした。
 僕自身のタバコデビューは大学生になって成人した頃。高校時代はバスケ部のキャプテンをしていてスポーツ一筋で、不良でもなかったので見向きもしませんでしたが、女の子にモテたかったのでタバコを吸い始めた記憶があります。 
 

ディカプリオが背負う悲哀が魅力的

『シャッター・アイランド』
2010年 アメリカ/出演:レオナルド・ディカプリオほか/パラマウント ホーム エンターテイメント ジャパン
​精神を病んだ犯罪者を収容する孤島を舞台に、今を訪れた連邦保安官が解けば解くほど深まる謎に翻弄されていく。

 映像ディレクターとして生きていくと決めたとき、自分の好きな映画を並べて、趣味嗜好を分析したんです。するとその多くにレオナルド・ディカプリオ が出演していることを発見。中でも特に好きな作品が『シャッター・アイランド』です。
 この物語ではディカプリオ演じる連邦保安官が、精神病の犯罪者が収容されている施設でどんどんノイローゼになっていきます。彼が幻覚を見る直前、吸っていたタバコの煙が逆流するカットがあるのですが、パニック状態に陥っていて、喫煙することで心を落ち着かせたいという状況がわかります。
 一方で、「異常なことが起きている」ギミックとしてタバコが使われているのが新鮮でした。 ほかに印象的だったのは、物語の最後に医師から「連邦保安官自身が精神異常である」と突きつけられて、彼がロボトミー手術を受けることを決意するシーン。そこでも喫煙をしているのですが、何か踏ん切りをつけるとき、生理的にタバコが手放せない彼に共感。自分も大きな決断が必要な場面ではタバコが手放せません。
 ディカプリオ出演作に共通する魅力は、物語を通して悲哀を感じさせるところ。僕は3歳の頃に両親が離婚しているのですが、映画を観る目的はそのときの、もの悲しいけど懐かしい感情を追体験するためなのでは? と思っています。今、自分の幼少期をモチーフにした映画を撮っていますが、僕の心を落ち着かせてくれるのはやっぱり束の間の喫煙タイムですね。

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