タバコがかっこいい映画

渡辺大知「タバコが当たり前だった時代を知る」

2019.01.23 東京グラフィティ2月号(#154)個性的レビューインタビュー生き様

こみね

こみね(Editor)

PROFILE

渡辺大知(28)俳優、ミュージシャン

黒猫チェルシーのボーカルとしてデビュー。出演作は映画『寝ても覚めても』『ギャングース』、ドラマ『恋のツキ』など。現在放送している『ゾンビが来たから人生見つめ直した件』(NHK)にも出演中。

ダサいからこそかっこいい

『一瞬の夢』
1999年 中国・香港/出演:ワン・ホンワァイほか/ジェネオン エンタテインメント

スリで生計を立てている小武はバーで偶然知り合ったメイメイと過ごすようになり、今まで抱いたことのない夢を見つける。

 現実ではダサい姿でも、映画の中ではかっこよく見えることがある。そう学んだ作品が『一瞬の夢』です。ワン・ホンワァイ演じる口数の少ない主人公が、好きな女の子の前でタバコを吸っている姿がとにかくイケてない。でも画としてすごくかっこいい。気になっている女の子との会話もうまく運ばなくて、その間を埋めるように、タバコを吸ってバフーっと大きい煙を吐き出すんです。

  現実では彼のようなタイプと仲良くできないと思いますが、 背中を丸めて煙を吐き出す姿はついついモノマネしたくなる魅力があります。主人公と時間を共有する彼女を演じるのは、後にワン・ホンワァイの奥さんになるズオ・バイタオ。でも劇中の二人は気持ちが通いません。

 結局、主人公はスリの容疑で逮捕され、彼女の前から姿を消します。その後、彼女が一人でタバコを吸う姿にグッときましたね。映画ではしばしば、タバコの煙が口に出せなかった感情のように映ることがあります。 ジャ・ジャンクーのほかの映画でも男女がキスをした瞬間に一方の鼻から煙を吹き出すカットがありますが、視覚的な気持ち良さを感じます。

 ジャ・ジャンクーはセリフとセリフの間に流れる時間を視覚的におもしろく魅せるのがすごく上手で、大好きな監督の一人です。タバコに限らず、映画の中に出てくる煙は予測できない動きをする小道具であり演出。普段自分が映画に出演する際も、監督をする際も、現場ではその使い方に注目しています。

タバコの煙は若者のもがき

『アフリカの光 愛・青春・海』
1985年 日本/出演:萩原健一ほか/東宝

北国の漁港を舞台に、「アフリカの光」を求めて彷徨う2人の若者の青春を描いた群像劇。

 『アフリカの光 愛・青春・海』 を初めて観たのは大学2年のとき。現実だったら泥沼に見える恋愛も、映画では美しく魅せることができると実感した作品です。大学では映画を学んでいましたが、この作品は授業でさわりだけ観せられたんです。離れたいけど離れられない男女の執着や狂気がきちんと描かれていて感動しました。帰り道に気になってレンタルビデオ店に駆け込んだのを覚えています。 
 
 きちんと観たら桃井かおりさんも萩原健一さんも普通にバカスカとタバコを吸っていたことにびっくり。この作品が公開された当時は、もがいてる若者の象徴としてタバコが当たり前の存在だったことを知りました。
 

僕自身も喫煙者なんですが、 タバコを吸っていることを周りに話すとびっくりされるんです。「なんで吸っているの?」「いつ辞めるの?」って。疑問を持 たれるくらいにタバコが特別な存在になってしまったことが悲しいですね。

 今日では映画の中でも、タバコを吸っているキャラクターに対して観客から意味を求められ ます。僕が出演した映画『ここは退屈迎えに来て』では、細いタバコを吸うことでゲイであるということを匂わせていたり『寝ても覚めても』では東出昌大さん演じる顔が同じ二人(一人二役)に、タバコの匂いが人物に変化をつける小道具として使われたりしています。映画の中におけるタバコの役割もどんどん変わってきていて、それはそれでおもしろい映画の楽しみ方かもしれません。

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