タバコがかっこいい映画

「大人になった証のようなもの」鈴木涼美/タバコがかっこいい映画 vol.2

2019.05.23

東京グラフィティ編集部

東京グラフィティ編集部(Editor)

 

「タバコがかっこいい映画」vol.2 

テーマ別映画レビュー

PROFILE

 鈴木涼美(35)作家、社会学者
慶應大卒、東大大学院社会情報学修士課程修了。大学院修了後は約5年半、日経新聞社に記者として勤務し、現在はフリー。著書に『オンナの値段』(講談社)など。

 

少女っぽさとタバコのアンバランスさに惹かれる

『月曜日のユカ』
1964年 日本/出演:加賀まりこほか
Happinet
ユカは平気で男と寝るがキスだけはさせない、18歳の女の子。大好きなパパを喜ばせたい一心で、パパに頼まれた枕営業を了承する。



 若い頃の加賀まりこさんが演じたような、不安定な女の子に魅力を感じます。少女であったり大人であったり、幸福であったり不幸であったりする。そんな、どっちにも傾きそうな微妙なところでバランスをとっている姿に惹かれますね。
 主人公のユカはやることがあざとくてかわいい。“パパ”と呼ぶ、船荷会社の社長に人形を買ってと言う純情さの一方で、男の金で贅沢している。そんな混同したキャラクターなんです。恋人と出かける前、ユカが着替えながらタバコを吸うシーンが一番好きです。バタくさくてコケティッシュなかわいい女の子がタバコを吸っている姿って、今はなかなか見られない。だからこそ、その画だけで美しい。女の子の生活空間で、加賀さんの顔とタバコのコントラストがさらに強まっています。それがいいですね。横浜で大人びてしゃれた生活をしている女の子、でも中身は子ども。そんなユカがここでタバコを吸っていることで、彼女のアンバランスさをすごく感じられるんです。まるで、少女がハイヒールを履いているような。
 この作品では、ここでタバコ吸うんだ?という意外な描き方がされている。ユカのエキセントリックさやラストシーンの激しさ、うちに秘めた危うさが、タバコによって小出しに描かれているように感じます。
観てきた映画や読んできた小説では、日常の中にタバコがありました。なので、子どもの頃はタバコの大人っぽさに憧れていましたね。

 

 

ヘアスタイルも煙の吐き出し方も真似した

『パルプ・フィクション』
1994年 アメリカ/出演:ジョン・トラヴォルタほか
東芝デジタルフロンティア
マフィアのヴィンセントは、ボスに愛妻ミアの世話を頼まれる。彼女の望むままに食事、ダンスをして過ごすが彼女の心停止して…。



 『パルプ・フィクション』は私が一番好きな作品。感動的なシーンはないんですが、セリフの一つひとつがとても凝っているんです。例えば、マフィアのジュールズが殺しの前に必ず聖書の引用を述べるとか。
 一番好きなシーンは、マフィアのヴィンセントがボスの奥さんであるミアをダイナーに連れて行ったとき。初対面でなかなか会話が弾まない中、注文を終えてヴィンセントがタバコを巻くんです。すると、ミアが「私にも巻いてくれる?カウボーイ?」と話しかけて、ヴィンセントが「じゃあ、これをどうぞ、カウガール?」と答える。普段はボックスのタバコを吸っているミアだけど、この場面ではヴィンセントが手で巻いた不恰好なタバコを吸うんですよね。この掛け合いがすごく好き。二人の初めての会話がこれであることによって、主従関係も見えてくる。他のシーンではみんな自然にタバコを吸っているけれど、ここではタバコを介したコミュニケーションがあるんです。何より、ヴィンセントと喋っているミアが気を使って煙を横に吐き出す仕草。それが最高に色っぽい。ヤク中でヤバい女なのに、論理的に話す姿も魅力的に見えましたね。
 ミアはひっきりなしにタバコを吸っていますが、私もタバコが大好き。外で仕事をするときは紙タバコ、家ではプルーム・テックをくわえています。実は、ミアに出会って、ヘアスタイルからタバコの吸い方まで真似しました。それくらい、彼女のことが好きなんです。



 

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