人生最高の本、映画

魂が震えて、目が開いて、他の作品も愛せるようになった

2015.12.26 レビュー

東京グラフィティ編集部

東京グラフィティ編集部(Editor)

古川貴之(THE PINBALLS)/アーティスト
『セント・オブ・ウーマン/夢の香り』
監督:マーティン・ブレスト/1992年アメリカ

それまでも映画をたくさん観てきたし、わかってるつもりだった
  『セント・オブ・ウーマン』を観たのは二十歳。きっかけは、アル・パチーノが好きだったから。それまでもいっぱい映画観てきたし、感動もしてきたし、わかってるつもりだった。いいもの、悪いものっていうのがね。でも、この映画で目が開いた。もう60回くらい観てる。
 主人公は苦しんでいる二人の男。一人はチャーリーという苦学生。名門の学校に通い、努力している。でも周りはお金持ちばかりで馴染めない。バイトをすることになり、そこで出会ったのが傷ついた盲目の元軍人だった。彼がアル・パチーノ演じる、フランク・スレード中佐。めちゃめちゃ頑固で嫌な奴。

 何気ないたった一言の台詞も、俺にとってはすべてが宝
  チャーリーの同級生が校長先生にいたずらをしたことが、学校で大問題になっていた。いたずら現場をチャーリーが目撃したことを校長先生は知っていて、犯人の名前を教えろと迫る。教えたらタダでハーバード大学に行かせてやるって。友だちでもない奴を守る必要があるのか、悩む。
 一方で、中佐も問題を抱えていた。一緒に旅行に行くんだけど、旅先で自殺を試みる。チャーリーが必死に止めて思いとどまるんだけどね。すると今度は中佐がチャーリーを助けて、二人は友だちになるという話。物語はすごくシンプルですよね。
 この映画は名台詞の宝庫。何気ない一言も俺にとってすべてが宝。例えば、中佐が死にたいってピストルを当てて、「アイムインザダークヒア」って怒鳴るんです。歌みたいだなって思ったな。チャーリーは「足が絡まっても踊り続ければいい」と返す。それは前のシーンで中佐がチャーリーに言った言葉だった。伏線みたいで余計に響くんだよね。その時、アル・パチーノの髪が乱れてオールバックが乱れるのが超セクシー(笑)。

自分の魂と共鳴するものであればださくてもいいんだ
  中佐がチャーリーを救ったあとのシーンが一番好き。口を割らないチャーリーは退学させられそうになるんだけど、中佐が校長先生と戦う。こいつは友だちを守ったんだってね。そこでまた名台詞があって。「人はいつだって人生の岐路に立つ。その時、私は正しい道はいつもわかっていたけど、その道は行かなかった。なぜなら険しい道だからだ」って怒鳴る。それがとにかくかっこいい。俺、怒鳴るような歌い方をしてるんだけど、アルパチーノの演技に影響受けてる。
 中佐は女好きでね。対決のあとに女教師が近づくと、匂いをかいで「岸辺の花ですね」って香水の名前を当てる。「これでいつでもあなたを探せます」だって。俺が女だったら一瞬で好きになると思う(笑)。
 この映画は美しくて優しい。苦しみはあっても、貫いているテーマはポジティブなところが好き。本気で美しいものって、ほんの1ミリずれているのでもなく、1ミクロンずれているのでもない。ぴたっと「これだな」っていうのがわかると、他の作品を観るときも目が開くんです。この映画で魂が震えてから、他の作品も愛することができるようになった。それまでは映画もファッションで観てたのかな。なんかかっこいいとか、評価されてるからとか、おしゃれだからとか。でも、そうじゃない。自分の魂と共鳴するものであれば、ださくてもいいんだよね。自分が今やってる音楽でもそう思ってる。俺、この映画が好きだっていつも迷わず言う。愛してる映画なんです。

PROFILE

古川貴之(THE PINBALLS)/アーティスト
4ピースガレージロックバンドTHE PINBALLSのVo。荒々しくも「唄心」溢れるハスキーハイトーンヴォイスと、ライブで培ってきた王道ロックサウンドを武器にフロアを揺らす。2015年10月21日に4th mini albumである『さよなら20世紀』をリリース。また、リリース・ツアーとして11月から東名阪にてワンマン・ライブを開催する。

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